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父、菊生の関西方面での最後のシテとなる大槻自主公演(主催観世流、大槻文蔵氏 平成16年6月26日)での客演公演、能『鬼界島』が無事盛会に終了しました。80歳を越えた高年齢や梗塞による障害、春の尻餅事件による腰痛の後遺症で、歯を食いしばっての父の力演でした。杖や床几の使用と特別な演出をし、ワキの宝生閑氏やアイの茂山千作氏と贅沢なお相手のお力添えを頂き、よい記念となる舞台となりました。
 大槻自主公演の特色は演者を観世流一流に限定せず、広く他流の公演も催す画期的なものです。番組も計画的であり、毎回の斬新で優れた企画を私は高く評価しています。
父は喜多流の代表として、大槻文蔵氏よりシテを依頼されてから20年が経ちました。大阪という地は、決して喜多流の勢力が強いとは言えません。喜多流愛好家もさほど多くない状況下で大槻自主公演での喜多流の公演は貴重で、喜多流の能が観られる数少ない機会です。このようなお取りなしをして下さった文蔵先生には感謝の気持ちで一杯です。父は長年、大阪で指導に当たっていたこともありますが、それ以上に父と文蔵先生の親交の深さがその第一の理由であることは流儀の皆が周知しています。



この会では以前、能の前に観世流と喜多流の立合いの仕舞がありました。観世流は大槻文蔵先生、上田拓司氏、赤松禎英氏、喜多流は粟谷能夫、高林白牛口二氏、出雲康雅氏、そして私も競演の役を頂きおおいに勉強になり、良い刺激となりました。私がもっとも敬服することは、文蔵先生が観世流の内弟子さんに他流の能や仕舞の舞台を見せる機会を持ってきたことです。今このようなことを個人や団体で行っているのは少ないと思います。



昔、一時期故喜多実先生も他流の方々をお招きして、喜多流養成会なるものを起こし催しましたが、長くは続きませんでした。大槻自主公演の歴史の長さには頭が下がります。視野を広く学習させることは、流儀の良さ悪さが判り大切なことです。狭い思考になりがちな私たちの頭脳に大胆かつ新鮮な風を吹き込んでくれることと思います。今回、父の任は終えましたが、次に代わるものが生まれて、他流と交流する、このような喜多流の公演がなくならないことを私は切望しています。



幕に入り込むときの父の後ろ姿に、俊寛というよりは、役者粟谷菊生の舞台への必死な挑戦と達成を垣間見たように思いました。父の大槻公演での最後のシテの姿が俊寛にオーバーラップして私には残酷でもあり、悲しい場面として心に残りました。そして、父に教えられた言葉「芝居しては駄目、でも芝居心がなくては駄目」という名言が脳裏をかすめ、大槻自主公演で得た「他の舞台を良く見ること」の意識に立返ろうという思いも起こさせてくれたのです。
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