粟谷能の会
粟谷能の会  »  能は笛で始まり笛で終わる Welcome to 粟谷能の会. [Login] [Register]

トップ  >  菊生の蔵  >  能は笛で始まり笛で終わる
能で使われる楽器は四拍子といって笛、小鼓、大鼓、太鼓の四種あり、笛はこの中で唯一の旋律楽器です。三月三日の雛祭りに飾られる五人囃子に扇子を持っている人形が一人居ますが、あれは謡を謡っていて、他の四人を見ると、それぞれの楽器がお判りになるでしょう。演能開始前に、鏡の間で先ず「お調べ」といって楽器の調整(チューニング)をいたしますが、笛から始まり、続いて小鼓、大鼓、太鼓の順となります。 揚げ幕を片幕にして橋掛りから舞台に入るのも笛方からです。笛方が後座に入る頃に地謡(コーラス)が切戸より登場し、笛方が笛座についた後に地謡の先頭から順に地謡座に座わります。
能は笛の吹き出しで始まり(時に例外の曲もありますが)最後も笛の音色で終わりとなります。そして退場は、まず笛方が立ってから地謡も立ち上がります。
囃子方、地謡方の人々が全て舞台より立ち去って、その曲の舞台は完全に終了したということになるのです。
地謡の前列右端は笛柱を挟んで笛と最短距離にあります。
私が少年だった頃、忘れもしない靖国神社の奉能の時でした。地謡の中で最年少だった私が、そこに座っていて一曲が終わったので立ち上がろうとすると、「坊や、笛より先に立つんじゃない!」とお笛の偉い先生に一喝されたことがありました。
武田信玄のようなお顔をした、島田巳久馬先生でしたが、ある時「江口」の地謡を謡った私に、その同じ先生から「坊や、いい謡を謡ったね」と誉められました。これは今でもはっきり覚えているほどで、とても嬉しかった。
叱るときは叱る、誉めるときは誉めて励ます。今はこういう事が世の中全般にわたって無くなってきたと思います。
島田先生から受けた此の二つのことばは、この年になっても心の中に深く残る忘れ難いものとなっています。

島田巳久馬
1889(明治22年)〜1954(昭和29年)笛方一噌流 熊本生まれ
正木利三郎 十二世一噌又六郎に師事、1938(昭和13年)より宗家代理を勤めた

プリンタ用画面
友達に伝える
前
小鼓について
カテゴリートップ
菊生の蔵
次
父 益二郎のこと