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能楽師が訪ねるスタジオ入り口には「謡曲鑑賞云々」と書かれている。
スタジオは広さも様々だが、最近、謡曲関係者は同じスタジオに通されているようだ。
入り口近くに録音室があり、録音技師やディレクターがこの部屋からガラス越しに指示を出す。「5秒前、4秒前、3、2、1…」、そしてどうぞと手が振られて我々は謡い出す。
出演者の前にはそれぞれマイクが並びその前に正座して謡う。

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不思議とどこのスタジオにもピアノが置いてあるのだが、クラッシック演奏の収録でもあるのだろうか。見台は長唄用の本を立て掛けるタイプのものが用意されている。以前は通常の本を横に平らに置くタイプのものではなかったかと思うのだが、確かではない。録音はテレビ撮影と違い音だけのため、出演者5、6人は皆、見本(けんぽん)といって謡本を見ながら謡っている。

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録音でも正式には着物を着用したほうがよいのだが、私は無精して洋服姿で謡っている。座るとズボンに皺が出来るので、ダブダブの緩いズボンに穿き替えて一応お洒落のつもりである。昔、上にガラス窓があるスタジオがあって、中が覗けるようになっていた。誰にも見られることはないと思っている私たち出演者は、猿股やパンツ姿のあられもない恰好で着替えていたのだが、どうも上の窓から見られていたようだった。さぞご覧になられた方は驚かれたことと思う。これじゃお洒落だなんて言っていられない、思い出すたびに恥ずかしい。それからというもの、私はスタジオの中に入ると必ず周りを見回す癖がついてしまった。

収録メンバーはシテが決めることになっていて、日頃謡い慣れた人が集められることが多い。伯父の新太郎や父は依頼がくると、決まってまず親族に声をかけ地謡を構成したものだ。お陰で私もあの独特の緊張の収録現場を経験することが出来たのだと感謝している。こんなところでも伯父や父の配慮を感じてしまうということは、私も齢を重ねつつあるということだろうか。これからは、どんどん若い人にも収録という経験をして欲しいと思う。
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