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能舞台で使う道具の一つに作り物があります。
作り物には、山、塚、宮、藁屋、井戸、舟、花見車など、実に様々な種類がありますが、予備知識なく能をご覧になった方の中には、その簡素な作りに驚かされたのではないでしょうか。作り物の材料は竹です。昔、竹はどこでも簡単に調達できたため、地方での興業にも便利だったのでしょう。また、しっかりしている反面、炙るだけで曲がるなど、扱いやすいことも素材として選ばれた理由のひとつだと思います。作り物の基本的な制作方法は、竹で骨組みを作り、帽子(ぼうじ)といわれる白いさらしを巻くだけです。帽子を「包帯ですか?」と尋ねられますが、包帯ではなく、さらし布を10センチメートル程度の幅に裂いたものです。裂いた布はまず広げて伸ばし、端からしっかり巻作って常備しておきます。竹の組み合わさった部分を帽子できっちり巻き補強しながら、竹自体を包み隠すように巻き付けます。

今でも京都では、作り物を制作する専門の方がいらっしゃると聞いていますが、京都以外は作り物の制作はほとんどシテ方の仕事になっており、修業中の内弟子や書生が担当しています。私も内弟子時代にはたくさん作らされました。最初の頃は巧く作れず、苦心の結果できあがった塚が傾いていたり、緩んだ帽子が外観を損ねていたりで、叱られたこともありました。帽子が上手に巻かれた作り物は当り前のように舞台に出てきますが、先輩から伝授された知恵や、何度も作るという能楽師の経験に支えられているのです。

作り物は竹自体を見せているものと、帽子で完全に巻いているものがあります。一般に品格のあるものは帽子で巻くというのが原則です。たとえば、藁屋には帽子を巻きませんが、宮は位が高いため全体に巻きつけています。こんなことに注意して舞台をご覧になると面白いかもしれません。

台輪帽子で巻いた状態塚の骨組
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