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謡には絶対音がありません。謡の調子(音の高低や言いまわし)は、シテの部分はシテに、地謡の部分は地頭に任されています。
一般的に、謡の調子は自由に決めて良いと言われています。
特に、喜多流は謡の調子が人によってそれぞれ異なるため、私達も謡うときに戸惑うことがあります。けれども、そこが謡の面白みであると言えるかも知れません。テープに残っている喜多流の昔の謡を聴くと、今とは違う高い調子に驚かされますが、魅力のある謡です。
しかし、いくら自由な調子で謡って良いと言っても、調子の自由が利かなくなる部分もあります。たとえば、クセの上羽(アゲハ・クセの途中でシテなどが一句謡うところ)の直後に出る地謡です。謡本には上音で謡うとあります。それでは、この部分の上音とは一体どの程度の調子をさすのでしょうか。 

『羽衣』の上羽後の謡はこうです。

撫づともつきぬ厳ぞと、聞くも妙なり東歌

ここでは謡い手の自由な調子ではなく、お笛の吹かれる森田流、高音三鎖(タカネミクサリ)、一噌流、上高音(あげのたかね)、藤田流、高音ノ三(たかねのさん)の調子に合わせることが心得です。笛の調子に近づけることで、謡は一層心地よく響きます。
上羽と言えば、私のご信頼する笛の一噌仙幸氏に教えていただいた言葉が思い出されます。

「あっくん、菊ちゃんのように謡いなよ、菊ちゃんが謡ってくれると、上羽の後が吹きやすい」

この言葉は、今でも私の大事な指針となっています。

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