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父とふぐ
粟谷辰三

今年は父益二郎の五十回忌追善能の年でございます。
父は昭和32年9月18日囃子科協議会にて『烏頭』の後の一声にて倒れました。私と弟(幸雄)は共に地謡の前列にいましたので動くことが出来ませんでした。
観世榮夫氏(当時は後藤榮夫氏)が急遽代役され、最後に『融』を謡い、はじめて父の死を知り、胸がつまり涙、涙でした。
父との思い出は数々ございますが、私が生まれて初めてふぐ刺しを食べたときのことは忘れられません。九州、田川の公演後の宴席で、大きな模様の絵皿が出てまいりました。見ると何も大皿に盛りつけがないので「なにもないよ」と父にいいますと、透き通るように並べられている白身の刺身をさして、「これがふぐ刺しだ」と教えられました。
私とふぐの出会い、懐かしい思い出です。
私自身は大東亜戦争というたいへん悲惨な時期に青春を過ごし、数々の思い出深い体験もした人生ですが、今はとにかく両親のもとに生まれてきたことに感謝しております。
いつの間にか私は父の年を越え、高齢と呼ばれるようになり感慨深いことですが、息子、孫のためにも私なりにまだまだ頑張っていきたいと祈念の日々でございます。

写真は我が家にある父の写真です、能舞台ではないものと捜した1枚です。
周りにおられる方は、私にはどなたか判らないぐらい昔の1枚です。
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