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謡は能という戯曲の詞章(文章)を声を出して歌い上げるものです。
私たちシテ方の能役者は詞章を暗記します。
それは会話文でも、想いを込めた胸の内の感情であっても、舞台進行に伴い
すべて声を謡の音に変えて発し、観客に伝えます。

地謡は、謡うためだけの専門分野です。
文楽の義太夫や歌舞伎の長唄などの謡い手は、本を見ますが、能では役者はもとより地謡も謡本を見ることはありません。ですから謡の詞章を覚えなければならないのです。
芝居の役者さん同様、台詞覚えも仕事の一つで、これが一苦労です。

若い時分、謡を覚えるのは、鵜呑み、丸暗記でした。
謡っている意味など理解していません。とにかく声を出して、音で覚えます。繰り返し声を出すことで、身体に叩き込むやり方です。
若い頃は頭脳も柔らかいのでしょう。不思議と意味も判らないのにどんどん覚えられました。今は違います。脳細胞が減ったためでしょうか。二倍は時間がかかります。

この若いときの丸暗記は悪いことではないと思いますが、しかし大人になり、そのまま変えないのは問題です。舞台芸術にはならないからです。

大人には、大人の覚え方が必要になってくると思います。
理屈がわかり、意味を知り、型(動き)を把握して、謡声でフォローして覚えるのです。

では、謡を習われている謡曲愛好家の皆様に、謡上達の方法をお教えしましょう。

それは舞台人同様、暗記することです。
謡を暗記し声を発すると、その謡の言葉が生き生きと響いてきます。

何故でしょうか?
下を向いて前屈みで、謡本を読んでいると声の通りが良くありません。
しかし暗記すると姿勢を真っ直ぐにして声を出すことができます。すると身体全体を使って共鳴させて声が出るのです。
嘘だとお思いなら、一度試してみて下さい。

それから、もうひとつ、
能をたくさん観ることです。

但し、舞台に目を向けて鑑賞して下さい。
折角能楽堂にいらして能をご覧になられても、膝の上においた謡本の詞章ばかり見ていては、謡を聞いているだけに過ぎず、それでは役者の動きが判りません。

舞台で能役者の動きに、注目して下さい。
そして、ここからが大事です。
謡うときは、その見た能の光景を思い出しながら謡ってみるのです。
『羽衣』を謡うには能『羽衣』をご覧になり、想像しながら謡います。
きっと上手に聞こえるはずです。是非試してみて下さい。

(平成23年1月 粟谷明生記)
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