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@@@@ 「粟谷能の会通信 6月号」 @@@@

《6月の喜多流自主公演のご案内》
日時:6月26日(日)12時開演
場所:喜多能楽堂
演目:『放下僧』高林白牛口二『杜若』佐藤章雄『昭君』粟谷明生
料金:一般前売自由席6,000円 学生前売2,500円 指定席料2,500円
配役やあらすじなど、詳細はこちら:
http://www.kita-noh.com/schedule/koen/853/
番組表がダウンロードできます。
チケットお申し込み先
http://atelier19.moo.jp/nohcgi/
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今号は、粟谷明生が勤めます『昭君』をご紹介いたします。

能『昭君(しょうくん)』
あらすじ:
中国が漢と呼ばれた時代。皇帝の元帝は胡国(匈奴=現モンゴル地域)との和睦のため、宮女一番の醜女を胡国の大将・韓耶将に嫁がせることにして、その宮女の選出を画工の描いた絵で決めることにします。宮女たちは、胡国に行きたくないので画工に賄賂を与え、できる限り美人に描いてもらいましたが、王昭君は絶世の美女だったためか、画工に賄賂を渡しませんでした。すると画工は故意に醜く描いたため昭君が選ばれてしまいました。
いよいよ胡国への旅立ちの日、昭君が帝に拝謁すると、その美しさに帝は驚き嘆きました。しかし、すでに決まったことと諦め、仕方なく見送りました。後日、帝は偽りの絵を描いた画工を処刑したと云われています。
昭君は父母(前シテ・前ツレ)に、自分の形見として庭に柳の木を植え、柳が枯れたら私が死んだと思って下さい、と言い残して胡国の韓耶将へ嫁いでいきました。能『昭君』は、昭君の父母が我が子と別れたことの嘆きを主題にしています。父母は大事に柳の木を清めていましたが、遂に枯れてしまった柳を見て昭君の死を察します。故事に死者の形見を鏡に映すと対面出来ることを知った老人夫婦は、昭君の植えた柳を鏡に映してみます。
<中入>
すると、鏡に美しい昭君の霊(後・子方、ツレのことも)が現れ、続いて鬼の形相の韓耶将の霊(後シテ)まで現れてしまいます。鬼呼ばわりされた韓耶将は、己の姿を鏡で見て、なるほど道理、鬼のような顔だと恥じ消えていきます。
最後は、鏡に美しい昭君の姿だけが残りました。
曲名にもなっている王昭君は子方として登場します。美人を子方で演じるところがいかにも能らしい手法です。
(詳しい詞章はここをクリック。※ただし喜多流の謡本に拠っています)

ひとこと:
昭君の話は日本では『唐物語』や『今昔物語』などに描かれ、『和漢朗詠集』にも昭君の項があります。楊貴妃や西施などとならんで三大美女と言われるくらいですから、知名度は高かったのでしょう。
昭君のお能では、彼女自身の悲劇ではなく、あくまで、彼女の境遇を嘆き悲しむ父母、というところに主眼が置かれています。
大抵の場合、昭君の悲劇性といえば、匈奴といういわば蛮族の地へ送られること、そしてその遠い異国の地で一生を終えるという点で語られます。
しかしお能では直接その悲劇を一曲の物語にするのではなく、その境遇を哀れに思う彼女の両親を描くことで、更に複雑な悲劇性を持っています。(もちろん昭君の悲劇についても語りますが)。お能の中で悲劇は両親にも有り、昭君自身にも有るのです。
そういった構造なので、このお能は『昭君の両親』と名付けてもよいようなものなのです。ですから、皆様も両親の視点からご覧いただくと、感情移入がし易いのではないかと思います。

中入り後にはシテは父親から韓耶将の霊へと身を変えて登場しますが、古い演出では父親も母親と共に舞台に残り、別の役者が韓耶将の霊として登場したようです。
美女の昭君(子方)に続いて、韓耶将はおどろおどろしい鬼のような恐ろしい姿で登場します。美女と野獣、ではないですが、美女と蛮族。このような恐ろしい蛮族に嫁ぐこととなったことがまさに昭君の悲劇なのですが、後場ではそれを言葉では語らず、ただただ恐ろしい鬼と可愛らしい子方を対比させることで、象徴的に表現しています。
後の荒々しい型の演技、そして鏡に映った我が身を恥じ、鏡(作り物)に手をかける型、など、後半は動きも見所です。
昭君詞章
⇒⇒能用語の紹介
早装束について
装束替えは通常、中入り後の間語り(アイがたり)の間に行いますが、「早装束」は間語りが無い時に、短い時間に装束を着替えることを言います。
観客はご覧になれませんが、楽屋では手際よく付けるために、いろいろ装束に仕掛けをしておき、選ばれた達者な着附人がスピーディに付けます。
もちろん付けられ方も心得がなければ、うまくいきません。
前シテの父・白桃があっという間に早替りして、後シテの鬼の形相で登場するのをお楽しみ下さい。
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